AdobeもMicrosoftもAutodeskも不要になる? 話題のオープンソース「ArtCraft」と「SolidCraft」

こんにちは!
今回は、パソコンで何かを作るのが好きな人にとって、ちょっと気になるソフトウェアを2つ紹介します。
日本ではあまり話題になっていないようですが、アメリカでは一部界隈でかなり盛り上がっています。
ひとつは、AdobeのPhotoshopやPremiere Proなどに似た操作環境を目指す「ArtCraft」シリーズ。もうひとつは、Autodesk Fusionに似た操作感を持つオープンソースの3D CAD「SolidCraft」です。
どちらも、これまで有料ソフトを使っていた人にとって、選択肢を広げてくれる可能性があります。
しかも、ソースコードが公開されているオープンソースソフトウェアです。
なんと、Windows、Macだけでなく、Linuxにも対応しているという親切設計!
ただし、ここで注意したいのが、無料で使えることと、安心して仕事に使えることは別の話だという点です。
今回は、それぞれの特徴に加え、開発状況、安定性、そして有名メーカーから訴訟を起こされる可能性についても考えてみます。
Adobe製品の代替を目指す「ArtCraft」

ArtCraft社のウェブサイトより引用
PhotoshopやPremiere Proに似たソフトが無料?
まず紹介するのは、ArtCraftの開発者が公開している「CraftApp」シリーズです。
2026年10月に入ってから注目を集めているプロジェクトで、Adobe製品などに似た操作環境を持つソフトウェアが次々と公開されています。
主なアプリは次のとおりです。
| アプリ名 | 主な用途 | 代替を目指すソフト |
|---|---|---|
| PhotoCraft | 写真加工・画像編集 | Adobe Photoshop |
| LightCraft | RAW現像・写真調整 | Adobe Lightroom |
| FilmCraft | 動画編集 | Adobe Premiere Pro |
| EffectCraft | 映像エフェクト | Adobe After Effects |
| VectorCraft | ベクター画像編集 | Adobe Illustrator |
| DesignCraft | ページレイアウト・出版物制作 | Adobe InDesign |
| PDFCraft | PDF関連作業 | Adobe Acrobat |
※対応機能やファイル形式はアプリごとに異なります。上記は主な用途の比較であり、各製品と同等の機能がそろっていることを意味するものではありません。
私のように、写真や動画を編集したり、ブログに掲載する画像を作ったりする人にとっては、気になるラインアップです。
例えば、ブログ用の写真をPhotoCraftで加工し、FilmCraftで動画を編集する、といった使い方が考えられます。
何が魅力なのか?
最大の魅力は、無料で利用できることと、既存のソフトに慣れた人が操作を覚えやすいように設計されていることです。
Adobe製品の操作画面やツール配置に親しんでいる人なら、初めて使うソフトでも比較的なじみやすい可能性があります。
また、開発者はRustというプログラミング言語を使い、既存ソフトのコードをそのまま流用するのではなく、独自に実装する方針を採っています。
ただし、オープンソースであることや、操作画面が似ていることだけで、機能の完成度や互換性が保証されるわけではありません。
実際に海外メディアが行ったテストでは、画像の選択・マスキングの精度や動画編集時の性能、対応ファイル形式などに課題が報告されています。現時点では、既存のプロ向けソフトを全面的に置き換える段階ではないようです。
参考:Creative BloqによるArtCraftの実機レビュー(英語)
Microsoft Officeの代替も登場
ArtCraftの開発者は、Adobe系ソフトだけでなく、Microsoft Officeに似たアプリも公開しています。
| アプリ名 | 主な用途 | 代替を目指すソフト |
|---|---|---|
| WordCraft | 文書作成 | Microsoft Word |
| GridCraft | 表計算 | Microsoft Excel |
| DeckCraft | プレゼンテーション | Microsoft PowerPoint |
毎月のサブスクリプション料金を少しでも節約したい人にとっては、魅力的な方向性です。
ただし、Excelの複雑な関数やマクロ、Wordの高度なレイアウト、PowerPointのアニメーションなど、既存製品の機能をどこまで再現できるかは別問題です。
仕事で使う場合には、ファイルを開けるかどうかだけでなく、編集後に保存したファイルが元のソフトでも正しく表示されるか、実際に確認する必要があります。
参考:Tom’s HardwareによるCraftシリーズの紹介(英語)
拡大するArtCraftエコシステム:FigCraftとCADCraft

ArtCraftは単一のアプリではなく、主要な商用ツールを網羅する巨大なスイートを目指しているようです。
Figmaの強力な対抗馬となるか?「FigCraft」
WebベースのUI/UXデザインツールとして業界標準の地位を築いた「Figma」。これの完全なオープンソース代替を目指しているのが「FigCraft」です。
- Figmaライブラリの互換性(目指している機能):
Figmaで作成されたコンポーネントやデザインシステムをインポートし、編集できる機能が計画されています。これが実現すれば、既存資産の移行コストを劇的に下げることができます。 - リアルタイム共同編集:
Figmaの最大の特徴である複数人での同時編集機能を、ローカルサーバーやP2P接続で実現しようとしています。クラウドサービスへの依存から脱却したいチームには魅力的な選択肢です。 - Figma風のUIとショートカット:
レイヤーパネル、プロパティパネル、ツールバーの配置など、Figmaユーザーが乗り換えても迷わないUI設計になっています。
2次元CADの定番をRustで再現「CADCraft」
AutoCAD LTなど、製造業や建築業で長年使われている2次元汎用CADの牙城を崩そうとしているのが「CADCraft」です。
- DWG/DXFサポート:
CADデータの標準形式である.dwgや.dxfの読み書きを(限定的とはいえ)サポートしており、既存のCADデータとのやり取りを可能にしています。 - コマンドラインインターフェース:
AutoCADユーザーが多用する「コマンド入力」による操作体系を踏襲しており、キーボードショートカット中心の高速な作図フローに対応しています。 - ネイティブ動作による高速性:
複雑な図面を開く際や再描画の際、WebベースやJavaベースのCADよりも軽快に動作することが期待されています。
Autodesk Fusionに似た3D CAD「SolidCraft」

次に紹介するのは、DIYや3Dプリンターに興味のある人におすすめしたい「SolidCraft」です。
公式GitHubリポジトリでは、パラメトリック設計に対応したオープンソースの3D CADとして紹介されています。
Fusionを使ったことがある人なら親しみやすい
SolidCraftの特徴は、Autodesk Fusionでおなじみの設計方法に近いワークフローを採用していることです。
例えば、次のような操作ができます。
- スケッチを描く
- 寸法や拘束条件を設定する
- 押し出しなどで立体を作る
- フィレットや面取りを追加する
- 作成履歴を確認し、後から寸法を変更する
パラメトリックCADでは、単に形を作るだけでなく、寸法や設計条件を変更したときにモデルを再計算できることが重要です。
SolidCraftも、このような設計の流れを重視しています。
例えば、DIY用のブラケット、収納ケース、3Dプリンターで製作する小物などを設計する用途が考えられます。
AIにモデリングを手伝ってもらえる
もうひとつ興味深いのが、MCP(Model Context Protocol)に対応していることです。
MCPは、AIアプリケーションと外部ツールを連携させるための仕組みです。
SolidCraftでは、対応するAIエージェントから設計操作を実行する仕組みが用意されています。
例えば、将来的には次のような作業をAIに指示する使い方が期待できます。
「幅80mm、高さ40mm、厚さ3mmのケースを作り、四隅に丸みを付けてください」
もちろん、指示しただけで常に正確な設計が完成するとは限りません。寸法、干渉、強度、製造可能性などの確認は必要です。
それでも、AIを活用してモデリング作業を効率化したい人には、面白いプロジェクトだと思います。
日本語メニューに対応している
日本語のメニューに標準で対応しています。
ただし、私のLinux環境では、モデル名などを日本語で設定できませんでした。
ただし、SolidCraftはまだ発展途上
SolidCraftについては、ここを理解しておく必要があります。
公式プロジェクト自身が、現状を「初期段階だが、簡単な部品の設計には利用できる」という趣旨で説明しています。
つまり、Fusionと似た操作ができるからといって、Fusionの代わりとして何でもできるわけではありません。
例えば、次のような点は事前に確認したいところです。
- 必要なスケッチ拘束やフィーチャーが実装されているか
- 複雑なモデルでも正常に再計算できるか
- STEPやSTLなどのファイルを正しく入出力できるか
- 設計履歴を変更した際に、モデルが壊れないか
- 必要な図面、CAM、解析、アセンブリなどの機能があるか
公式リポジトリには機能一覧、ロードマップ、既知の不具合を確認できる情報があります。導入前に目を通しておくとよいでしょう。
また、対応機能は更新によって変わる可能性があります。
AdobeやMicrosoft、Autodeskから訴訟を起こされる可能性は?
今回のようなソフトウェアを試すときに、気になるのが法的な問題です。
有名な商用ソフトにそっくりな操作画面を持つソフトを公開して、メーカーから訴えられることはないのでしょうか?
私は法律に詳しくありませんが、訴訟の可能性を完全に否定することはできないと思います。
ですので、試す場合はあくまでも自己責任でお願いします。
マルウェア(サプライチェーン攻撃)のリスクは?
「GitHubで公開されているオープンソースだから安全」と考えるのは非常に危険です。
特に、今回のように「既存の商用ソフトをRustで超高速にクローンする」という野心的なプロジェクトは、開発者の特定が難しく、背後に悪意ある第三者が潜んでいるリスク(サプライチェーン攻撃)を常に考慮する必要があります。
なぜリスクが高いのか?
- 匿名の開発者:
ArtCraftやSolidCraftの中心人物であるBrandon Thomas氏をはじめ、コントリビューター(開発協力者)の素性が完全に公開・検証されているわけではありません。個人や小規模な匿名グループが、善意のふりをしてコードを公開している可能性があります。 - ビルド済みバイナリの危険性:
GitHub上のソースコードは安全でも、配布されている「インストーラー(.exeや.dmg)」や「AppImage」などの**実行ファイル(バイナリ)**は、開発者が用意したものです。この中に、情報搾取を行うトロイの木馬や、バックドアが仕込まれている可能性があります。 - 急速な開発スピードの裏側:
「AI支援で猛スピードで開発されている」という触れ込みは魅力的ですが、逆に言えば、第三者が混入させた悪意あるコードのレビューが追いついていない、あるいは意図的に脆弱なコードが含まれている可能性も否定できません。
対策と心構え
- メインPCに入れない:
仕事や個人情報が入っているメインマシンでは実行しないでください。テスト環境や、初期化した仮想マシン(VM)、あるいは完全に隔離されたPCでのみ実行してください。 - ウイルス対策ソフトの反応を過信しない:
新種のマルウェアや、特定の標的を狙った攻撃(APT)は、ウイルス対策ソフトが検知できない場合があります。 - 信頼できるコミュニティの動向を待つ:
リリース直後に飛びつくのではなく、Hacker NewsやReddit、著名なセキュリティ研究者、Linuxディストリビューターなどのコミュニティがソースコードやバイナリを解析し、「安全である」とコンセンサスが得られるまで様子を見るのが賢明です。
開発途上のソフトは不安定なのか?
これは、私なら導入前に必ず確認したいポイントです。
開発途上のソフトウェアでは、次のような問題が起こる可能性があります。
- 操作中に突然終了する
- 編集内容が保存されない、または復旧できない
- 特定のファイルを開けない
- 計算結果や表示に不具合が出る
- バージョンアップによって以前の機能が変わる
ArtCraftについては、2026年10月のレビューでも、機能の精度や安定性、対応形式に課題が報告されています。
SolidCraftについても、公式に初期段階のソフトウェアと説明されているため、重要な設計作業をすべて任せるのは時期尚早と考えたほうがよさそうです。
ただし、開発途上だから必ず頻繁にクラッシュする、という意味ではありません。安定性は、アプリの種類、使用する機能、OS、バージョンなどによっても異なります。
安全に試すためのポイント
私なら、次のように使い始めます。
- 公式GitHubリポジトリや公式サイトから入手する。
- 最初は重要なファイルを開かず、テスト用のデータを使う。
- 作業中はこまめに保存し、別の場所にもバックアップする。
- 既存ソフトで作成したファイルを扱う場合は、元ファイルを上書きしない。
- OSやセキュリティソフトの警告を安易に無視しない。
- 更新前に、既知の不具合や変更点を確認する。
ダウンロードした実行ファイルが未署名の場合もあるため、公式配布元であることを確認したうえで、警告の意味を理解して判断しましょう。
特に仕事のデータや、作り直しに時間がかかる3Dモデルは、十分に検証できるまでは既存のソフトを残しておくのが無難です。
既存ソフトをすぐに解約するべき?
私の考えでは、今すぐすべての有料ソフトを置き換える必要はありません。
むしろ、現在使っているソフトを維持しながら、用途を限定して試してみるのがよいと思います。
| 用途 | おすすめの考え方 |
|---|---|
| ブログ用の画像加工 | PhotoCraftで簡単な編集を試す |
| 趣味の動画編集 | FilmCraftで短い動画を編集する |
| DIY用の小さな部品設計 | SolidCraftで簡単なモデルを作る |
| 仕事で使う重要なデータ | 既存の安定したソフトを維持する |
| 複雑な設計や専門的な制作 | 必要な機能と互換性を十分に検証する |
使い慣れたソフトと比較しながら、何ができて何ができないのかを把握すれば、将来の選択肢を増やすことができます。
まとめ:これからの成長が楽しみなプロジェクト
今回紹介したArtCraftとSolidCraftは、どちらも興味深いオープンソースプロジェクトです。
ArtCraftは、AdobeやMicrosoftのソフトに似た操作環境を目指しており、SolidCraftは、Fusionに近いパラメトリックCADの操作を実現しようとしています。
ただし、現時点では、既存の商用ソフトと完全に同じ機能や安定性があるわけではありません。また、オープンソースという理由だけで、法的な問題やセキュリティ上のリスクがなくなるわけでもありません。
それでも、趣味やDIY、ブログ制作など、失敗しても大きな問題にならない用途から試してみる価値はあると思います。
私は、こうしたソフトウェアが今後どこまで成長するのか、楽しみにしています。
皆さんも興味があれば、まずは小さな作業から試してみてはいかがでしょうか。
ただし、導入も使用も自己責任で。大切なデータのバックアップを忘れずに!
公式リンク
- ArtCraft関連:公式サイト
- Craft Appsデスクトップ版:GitHubリポジトリ
- SolidCraft:GitHubリポジトリ
※この記事は2026年10月時点の公開情報をもとに作成しています。ソフトウェアの機能、配布方法、開発状況、ライセンスは変更される可能性があります。導入前に最新情報をご確認ください。














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