アメリカの大学に入学するにするためにやることとは?
大学入学までの流れ
今回はアメリカの大学入学について書いていこうと思います。
大学入学までの流れはこんな感じです。
- 志望校、学科を決める
- 出願
- 合否、奨学金を確認
- 行く大学を決める
各項目について書いていきます。
志望学科をもとに志望校を決める
何校くらい受けるのか
まずは出願する大学を決めます。日本ではチャレンジ校、現実的な志望校、滑り止め、と3~6校受験するイメージがありますが、アメリカの高校生が受ける大学の数は7~10校が一般的です。一人当たりの出願数が多い理由としては、
- 大学ごとの入試がない
- 出願はネット上のフォームで行える
- 合格の条件がはっきりしていない
- 学費が高い上、どれくらい奨学金をもらえるか見当がつかない
- 基本、実家からは通わないので全国の大学が選択肢になる
などが挙げられます。
中でも学費に関する問題が大きく、全額借金してしまうと最悪、数十年間返済し続けないといけない場合もあります。私の高校の先輩はいまだに学生ローンが残っている祖父がいると言っていました。そんな事情もあり、たくさんの大学に出願し、より多くの奨学金を出してくれる大学に行く学生が多いのが現実です。
志望校の決め方
続いて志望校を決めます。カリフォルニア大学バークレー校など、いわゆる超一流大学はどんな分野でも優秀ですが、殆どの大学は学科によってかなりレベルにばらつきがあります。そのため重要なのは、まず自分が勉強したい分野を決めた上で、その分野に秀でた大学を探すことです。といっても、アメリカには役5,300の大学があるので自分に合った学校を探すのも一苦労です。そんな時、出発地点として役に立つのがこのようなランキングサイトです。
大学名をクリックすると合格率などの情報を見ることができ、入学難易度の参考にもなります。このランキングは工学部のランキングですが、"best undergraduate programs in computer science" などと検索をかければコンピューターサイエンス学科のランキングサイトがたくさん出てきます。ぜひ、"computer science" の部分を自分の志望学科に書き換えて検索してみてください。
また、さらなる助言を得るため、高校のスクールカウンセラーに相談するのもおすすめです。おすすめの大学や、志望校がどれくらい現実的なのか、など、アドバイスをくれる場合が多いです。
出願に必要なもの
出願に必要なものは大学や学部によって違いがありますが、特に要求されることが多いのは:
- テストのスコア (ACTかSAT)
- 高校の成績表 (Transcript)
- エッセイ
- 推薦状 (Letters of Recommendation)
- 課外活動や受賞の記録
です。留学生の場合、これらに加えて英語力テストのスコア提出が必要です。
以下で一つずつ解説していきます。
ACT、SATのスコア
アメリカの大学には大学固有の入試はありませんが、いわゆるセンター試験のような共通試験があります。試験はACTとSATの二種類があり、出願の際にはどちらかのスコアを提出することになります。どちらの試験も何度も受けなおすことができるので、そこまで緊張する必要はありません。二つの試験の違いは下の表にまとめてみました。
ACT | SAT | |
主催元 | ACT | College Board |
内容 | English (国語:文法・単語)Math (数学)Reading (国語:読解)Science Reasoning (理科:論理思考)Writing (任意) | Reading (国語:読解)Writing & Language (国語:文法・単語)Math (数学)Essay (任意) |
制限時間 | 2時間55分 (Writingなし)3時間40分 (Writingあり) | 3時間 (Essayなし)3時間50分 (Essayあり) |
スコア | 1~36 | 400~1600 |
結論を言うと、どちらのテストもほぼ同じです。ACTにはSATに無い理科のセクションがあることで、理系ならACTのほうがいい点数が取れそうに見えますが、SATも国語セクションが800点、数学セクションが800点なので、実際はあまり変わりません。また大学側も、どちらか一方が好ましいとは思っていないようなので、どちらを受けて提出するかは完全に受験者の好みです。しかし、どちらのテストも非常によく似ていることから、最近は両方受けてスコアが良いほうを提出するのが主流なようです。まずは、公式のサンプルテストがネットに公開されているので、それを両方試してみてみると良いと思います。
ちなみに、私が受験生だった2016年はSATが改修され現在の形式になる直前で、誤答すると減点される謎仕様でした。そのとっつきにくさに加えて、一番近い試験会場まで車で一時間以上かかったので、私はACTを選びました。EnglishとMathは少しの勉強で大幅にスコアを伸ばせると思います。一方Readingは結構な読書速度を求められ、Science Reasoningは論理思考のセンスが求められます。どちらも一朝一夕で身につくものではないので、これらのセクションが壊滅的に苦手であれば早めに対策を始めましょう。目標点数が34点だったにもかかわらずReadingが足を引っ張って33点止まりで終わった私からのアドバイスです。笑
高校の成績表
高校の成績表は入学者を決めるAdmissions Officeにとって非常に重要な判断材料です。
成績表で考慮される項目ははGPA (成績評価値) だけではありません。学年内での成績順位や、APと呼ばれる難易度の高い授業を積極的に受けたか、といった観点から、在学していた高校で「いかに上を目指したか」が測られます。例えば、簡単な授業ばかり選択してGPAが最高の生徒よりも、GPAで劣っているものの、難しい授業に挑戦した学生のほうが評価されるケースもあります。また、最終的なGPAが同じでも、一年生から徐々に成績が上がっているほうが、下がっているよりも好印象です。
ACTやSATのスコアは短期間でも割と何とかなるのに対して、高校3~4年間の成績はそうはいきません。そのため、大学に進学したい学生は高校入学当初からまじめに勉強します。
高校在学中に大学の単位が取れるAP Examについて知りたい方はこちらもどうぞ。
エッセイ
お題に沿ったエッセイを提出します。結構しっかり読まれるので侮ってはいけません。
内容は大学によって大いに異なり、「あなたがこの専攻を選んだ理由は?」といったストレートなものから、「あなたのアイデンティティに大きな影響を与えた経験、才能、文化的バックグラウンドは?」といった人格や価値観について問いかけてくるものもあります。アメリカの大学は「ユニークな人材」、「多様性」が大好きです。そのためエッセイでは、成績やテストのスコアでは表せない「自分だけの物語」をアピールするのが重要です。
例えば、医療系の専攻を選んだ理由を書く場合、「世界中の怪我や病気で苦しむ人を救いたいから」だけではなく、「医療従事者の親を通じて出会った○○の病気で苦しむ××さんの話を聞くうちに感じた、現在の医療における問題点の改善に貢献したい」、「日本という超高齢化社会で暮らしていることで、高齢者が増え続ける先進国の医療に○○で貢献したいと思うようになった」といった風に実体験やバックグラウンドを交えて、具体的に書くのがおすすめです。
大学側にとっては日本人というだけで割と珍しい人材なので、困ったときは日本特有の文化や社会問題を交えて書くのもいいかもしれません。かくいう私も「災害の多い国出身だからこそ感じるテクノロジーの可能性」に焦点をあてて書きました。
推薦状
推薦状を要求してくる大学もあります。大抵は2通必要で、高校の先生に書いてもらうのが一般的です。
学部生レベルで推薦状を重要視してくる大学は少ないと思いますが、成績表やエッセイで語り切れない功績や事情がある場合はアピールチャンスになります。
例えば、部活のリーダーとして活躍したなら部活の顧問の先生に、いかにリーダーシップがある生徒か書いてもらうのも良いでしょう。また、とても難しい授業でいまいちな成績を取ってしまっている場合、その授業の難しさと、一見いまいちに見える成績がどれだけ凄いことなのか書いてもらうのも手です。
課外活動・受賞歴
どれくらい重要視されるのかは不明ですが、課外活動や受賞した賞を入力するセクションが設けられている場合が多いです。高校のHonor Role (成績優秀者がもらえる賞)、美術の地区コンクール入賞、高校の化学フェアで入賞、近所の病院でのボランティア、募金活動に参加、など小さいことでもいいのでなんでも書きましょう。嘘でもつかない限り、悪く影響することはありません。
選考・合格発表・奨学金
選考基準
ほとんどの大学の選考基準は “Holistic Review"と呼ばれ、提出された内容を総合的に評価し、合否を決定します。この選考方法には、テストのスコアやGPAの足切りラインが存在しない場合が多く(存在していたとしても明言されない)、重視される項目もわからないため提出物はどれも手が抜けません。この不明瞭な合格基準が、アメリカの学生の一人当たりの出願数を押し上げている大きな要因だと思います。しかし裏を返せば、成績やテストの点数があまりよくなくても、エッセイや推薦状で自分の熱意とポテンシャルをアピールできれば合格の可能性も見えてきます。
ちなみに、このHolistic Reviewには生徒自身にはどうしようもない要因も絡んできます。例えば人種、性別、障がい、親が大卒かどうか、親類にその大学の卒業生がいるかどうか、などです。アメリカの大学は多様性に重きを置くため、希少性の高い特性を持った学生は有利になります。例えば、黒人の女生徒が女子学生が少ない工学部に出願した場合、似たような経歴の白人男子学生よりも合格のチャンスは高くなります。その一方、増加傾向にある中国やパキスタンなどの学生は、「アジア人は優秀で当たり前」という風潮と相まって、むしろ合格が大変になっている印象を受けます。また、多様性を求める志向に反して、一部の一流私立大学などでは逆に、親類にその大学の卒業生がいると優遇されたりします。日本では考えられないことですが、例えばマサチューセッツ工科大学などは出願書類で「あなたの親族にうちの大学の卒業者はいますか?」ともろに訊いてきます。もちろん、コネクションがない学生は絶対に入学できない、というわけではありませんが、こういった要因は「アメリカの教育システムはカースト制度同然」なんて言われる理由の一つかもしれません。
合格発表と奨学金の確認
殆どの大学の合否発表はメールで届きます(秋入学の場合2月頃)。さらに少し遅れてAward Letterという必要費用と奨学金をまとめた書類が届きます。アメリカの大学の場合、通う大学、および学部が一番の奨学金源になり、多くの場合、授業料減額あるいは免除、という形で支払われます。どのような学生に奨学金を払うかは大学によって様々で、家庭の収入に関係なく優秀な学生に援助を行うところもあれば、家庭の収入が一定以下なら授業料完全免除(極一部の一流私立)という大学もあります。
行く大学を決める
出願した大学の合否が判明したら、いよいよ行く大学を決めます。同じくらい行きたくて、同じくらいのレベルで、同じくらいの学費の大学に複数受かっていれば、実際行って雰囲気を確かめるのが一番です。多くの学生はこの段階で初めて合格した大学の見学に行きます。日本の場合二次試験がキャンパスで開催される場合が多いので、合格通知が来るまで一度も行ったことがないというのは稀ですが、アメリカの大学の出願は全てネット上で行える上、広いアメリカでキャンパスヴィジットに行くには結構旅費も時間もかかるため合格通知を受け取ってから初めてキャンパスに行くのは珍しいことではありません。
殆どの大学では合格発表後、合格者のための説明会とツアーを兼ねたオープンキャンパスイベントを開催します。個人的にオープンキャンパスで必ず見ておいてほしい点は、ずばり寮と食事です。学問と全然関係ないじゃん、何言ってんの?と思うかもしれませんが本気です。ほとんどの大学では一年生は強制的に寮に住まわされ、meal planという学食プランに入らされます。アメリカの大学生は勉強が大変で忙しいです。そんな中、毎日寝泊まりする寮が汚かったり学食がまずかったりすると心身ともに参ってしまいます。心を病むレベルの学食もあります。学食がだめなら、最低限、近所においしいレストランがあることを確認しましょう。
まとめ
長くなりましたがアメリカの大学入学の流れはこんな感じです。質問などがあれば気軽にコメントしていってください!
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