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AP Exam: 高校在学中に大学の単位を取る

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実力主義のアメリカの学校

アメリカは実力主義の国と言いますが、その制度は学生時代からすでに始まります。

成績の良い生徒を少人数のクラスに集め、ほかのクラスメイトよりもレベルの高い勉強を教えるなんてことが小学生の頃からあり、中学生になれば成績によって受けられる授業が変わったりもします。さらに高校生になれば生徒の学力によってRegular、Honors、Advanced Placement (AP)のクラスに分かれて勉強します(クラス、と言ってもアメリカでは科目ごとにクラスが違うため、国語はRegularクラスで数学はAPクラスという場合もあります)。

最上位のAPクラスは大学一年生レベルの勉強で、主にAP Examという試験対策を重視しています。他にも、一日の一部を近所の大学で過ごし大学の講義を受けることで、大学入学前に大学の単位が取れる制度もあります。

今回はそんな制度の一つAdvanced Placement Examについてです。

Advanced Placement Examとは

Advanced Placement Exam(通称 AP Exam)は College Boardという NPO が一年に一度(5月の1~2週)主催している試験です。この試験でよい評価を獲得できれば多くの大学で単位を得ることができます。

高校で APと題された授業を一年間受け、それに対応した AP Exam を年度末に受けるのが一般的ですが、授業を受けずに試験だけを受けることも可能です。

通っている高校で受けたい試験に対応した授業を教えていない場合や留学を考えている海外在住者の場合、自力で勉強して試験だけを受けることも選択肢に入ってきます。

難易度は科目にもよりますが、殆どはアメリカの大学一年生が一学期目に勉強するレベルの内容です。

評価(スコア)と大学の単位について

試験結果は1~5 の5 段階で評価されます。カリフォルニア工科大学、ブラウン大学など一部の私立大学を除き、ほとんどの大学では3以上の評価であれば何らかの単位になります。さらに、より良い評価を取ればさらに多くの単位がもらえたりより上位の単位がもらえる場合が多いです。しかし、もらえる単位が卒業に役立つかどうかは受ける試験、試験のスコア、大学、学部によります。

例えばイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の工学部の場合、AP Calculus ABがどんな単位になるのか見てみましょう。

スコアが3の場合、MATH 234 Calculus for Business I (4 credit hours)という単位がもらえます。一方、スコアが4か5の場合にもらえる単位は MATH 220 Calculus (5 credit hours)となります。ここで重要なのは、同じ微積の単位でもMATH 220のほうがより高度な内容であるため、MATH 234の単位は MATH 220の単位の代わりにならない、という点です。イリノイ大学の多くの工学系の専攻では MATH 220が必修なのでテストのスコアが3の場合、credit hourこそもらえますが、卒業に必要な微積の単位は大学で取り直す必要があります。

では、専攻に関係のある科目のテストで高評価を取らないと意味がないかというと、そうでもありません。多くの大学では専攻に関係なく社会や国語の単位が必修なので、例えば工学部に進んだとしてもAP US History(アメリカ史)の単位が卒業に必要な単位の足しなったもりします。卒業に必要だけど専攻には関係ない単位を大学入学前からたくさん持っていると、入学してすぐに専門の分野に集中できたり、時間に余裕ができることで面白い選択科目を受講できたりとメリットがたくさんあります。また、アメリカの大学はとにかく学費が高いのでAPテストでたくさん単位を稼いで早く卒業するのも手です。最悪、単位がもらえなくても大学レベルの勉強の予行練習になるのでアメリカの大学に進学を考えている人はやってみて損はないと思います。

どんな試験があるのか

様々な科目、合計38種類(2020年4月現在)の試験が存在します。

芸術 (Arts)

実際に作品を作る2-D Art and Design、3-D Art and Design、AP Drawing は提出した作品のポートフォリオで評価されます。一方 Art History (美術史)、Music Theory (音楽理論)は通常のペーパーテストです。

国語 (English)

文学作品に重点を置いた English Literature and Composition (通称 AP Lit.)と小論文やエッセイに重点を置いた English Language and Composition (通称 AP Lang. and Comp.)があり、どちらもペーパーテストです。

歴史・社会 (History and Social Sciences)

政治、世界史、アメリカ史、経済、人文地理、心理学など9種類。すべてペーパーテストです。

数学・プログラミング (Math and Computer Science)

微積(Calculus AB, Calculus BCの二種類)、統計、プログラミング(実技を習うComputer Science Aと理論を学ぶ Computer Science Principlesの二種類)があります。Computer Science Principlesのみポートフォリオの提出があり、他は全てペーパーテストのみです。

科学 (Sciences)

生物、化学、環境学が一種類ずつ、物理が四種類あります。すべてペーパーテスト。

外国語・外国文化 (World Languages and Cultures)

外国の言語と文化についてのテストで、ペーパーテストに加えてスピーキングやリスニングのテストがあります。中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、ラテン語が一種類ずつ。スペイン語のみ、言語を重視したものと文学を重視したものの二種類があります。このジャンルの試験は母国語者、非母国語者によって採点基準が異なる点に注意が必要です。日本語なら余裕と思って受験したら最高評価が取れなかったなんて話も聞きます。笑

研究 (Capstone Diploma Program)

研究、発表を学ぶコースです。二年かけてSeminarとResearchの二つを完了しポートフォリオの提出と、教師の評価でスコアが決まります。

どれを受ければいいのか

興味があるものに挑戦するのが一番ですが、理系の学科に進むことを前提に、特に役に立ちやすいものをピックアップします(自分が理系学科なので文系に進む場合は申し訳ありませんがよくわかりません)。

  1. Calculus BC: 多くの理系学科で必須の微分積分は大抵の専攻で役に立ちます。ABもいいですがBCの方がおすすめ。詳しく知りたい方は下の所感もぜひ読んでみてください。
  2. Computer Science A: 多かれ少なかれ、殆どの理系学科でプログラミングは必要になってきます。必須科目の代わりになりやすいのはComputer Science Aだと思いますが、コンピューターサイエンスでどんなことができるのか広く勉強してみたい場合はComputer Science Principlesもありだとおもいます。ただし工学系に進む場合、Principlesは必須科目の代わりにならないケースが多い印象です。
  3. 興味のある学科によりBiology、Chemistry、Physics C: 医療系や生物工学ならBiology、工学系ならPhysics C、一部工学系(化学工学、材料工学、農業工学、など)ならChemistry、が特におすすめですが、もちろん全部とってもOK。生物をがっつり使う学科は限られているので、志望学科が決まっていない場合、まずはChemistryかPhysics Cが無難です。興味があればBiologyとPhysics Cの所感も読んでみてください。

私が実際受けた授業と試験の所感

私が通っていた高校ではAPの授業を受けられるのはJuniorとSenior (3、4年生)のみだったので受けたテストの数はあまり多くありませんが、以下が私が実際に受けた授業の所感です。私はアメリカ育ちなので難易度に関する感想は英語力ネイティブレベルの人の視点になります(英語の語彙が少ないのは日本人だからではなく、単に国語が苦手だからです笑)。AP Examは数年おきにリニューアルされ、稀に大きく形式や難易度が変わる場合があります。私がこれらの試験を受けたのは2015年と2016年で、現在のテストとは異なる可能性がある点にご注意ください。

AP English Language and Composition (スコア:3)

小論文や批評文のような論理的主張を行う文章に重点を置いた国語の授業です。高校で受けた授業の中で一番嫌いでした。

試験はいくつかの文章を読んで選択肢形式の問題に答えるセクションと、エッセイを書くセクションに分かれています。読解のセクションはとにかく単語や言い回しが難しく、文章どころか問題文すら何を聞いているのかわからないものもあった記憶があります。さらに私の読書速度では制限時間ギリギリでつらかったです。

エッセイのセクションは3種類のエッセイ(1. 与えられた文章の修辞法を分析するもの、2. 与えられた議題に対する立場を決め、その立場を複数の文献からの引用を使って主張するもの、3. 所謂小論文)を書きます。エッセイは採点基準が曖昧な上、結果は総合スコアが届くだけなので自分の出来がどうだったのかはわかりませんが、正解がない分エッセイパートのほうが気持ちは楽です。しかし制限時間2時間強のエッセイパートが筆記なので手が筋肉痛になります。

授業ではたくさん本やエッセイを読まされました。主にノンフィクションです。正直どんな本を読んだかすらよく覚えていませんが、The Tipping Point という本は面白かった記憶があります。小さなきっかけによって劇的な社会的変化がもたらされた実例を使い、世論や民衆の心理などについてエッセイ形式で分析した本です。私は対策本などは使いませんでしたが高得点を狙う場合、単語力がつく本があるといいかもしれません。

AP United States History (スコア:5)

名前の通りアメリカ史です。

数百年しかないアメリカの歴史を一年かけて勉強するのでかなり細かいところまで覚える必要がありますが年号などは、「だいたいこの辺」とざっくり覚えておけばいいのはせめてもの救いです。

試験は選択肢形式のセクションとエッセイを書くセクションに分かれています。この試験の難しさは、時代ごとの主要人物や出来事を覚えるだけでなく、歴史上の出来事の関連性や時代ごとの世論も抑えておく必要があるところです。ゆえに暗記量が半端なく、そのせいか3以上のスコアを取る受験者は全体の役5割と低めです。

私が受けた試験のエッセイパートでは、「アメリカ独立戦争の前に起こった出来事をいくつか挙げ、それらの出来事がどのようにアメリカの独立のきっかけになったか書け」という感じの問題が出ました。対策としてはとにかく教科書を読んでノートをとって覚えるしかありません。百科事典並みの厚さの教科書を全部読み、自分で関連性のある出来事を矢印でつないだフローチャート風の年表を作ったりしました。もともと「歴史は暗記科目」というイメージがあり好きではありませんでしたが、歴史上の出来事がどういう経緯で起こったのか、その出来事によってその時代の人々はどうなったのか、といったことまで学んでみると案外面白いんだな、と思えた授業でした。使った対策本はPrinceton Reviewの物です。各時代のまとめが便利で練習問題の難易度も実際のテストに近いと感じました。

AP Psychology (スコア:5)

初歩的な心理学です。フロイトの精神分析学に始まり、睡眠、錯覚、心理現象や心理実験などについて広く浅く学びます。

もらえた単位は控えめでしたが試験は簡単な部類で、教科書の太字の単語を覚えるだけでも高スコアが狙えます。学生に看守あるいは囚人の役割を与え観察したスタンフォード監獄実験、人は悲しいから泣くのではなく泣くから悲しいのではないかと唱えた表情フィードバック仮説、奥行き知覚能力の検査をするための視覚的断崖実験など、5年前に受けた授業ですが未だに覚えている部分が多いくらい面白かったです。対策本は使いませんでした。

AP United States Government and Politics (スコア:5)

アメリカの政治の成り立ちや憲法について学びます。

暗記ものです。暗記が必要な量はAP United States Historyに比べて少ない上、暗記さえすればテストは簡単です。もらえた単位は控えめ。個人的に興味を惹かれなかった科目で、大変だった記憶もありませんが面白かった記憶もありません。対策本はBarron’sの物を使いました。練習問題は実際のテストより難しく、「これができればテストは安心」な難易度でした。

AP Calculus AB (スコア:5)とAP Calculus BC (スコア:5)

理系の学科に進む場合、間違いなく役に立つ微分積分です。

いいスコアを取れれば最大一年分の微積の単位がもらえます。ABとBCの違いは範囲のみで難易度に差はありません。BCの前半部分とABは同じ内容になります。College BoardによるとABは大学で学ぶ微積の一学期分相当、BCは二学期分相当だそうです。

私が通っていた高校にはABのクラスしかなかったのでJuniorの時にABを受け、Seniorの時に通信でBCの授業を受けました。個人的には両方受けてみて、ABを受けるメリットは薄いと思いました。数学が好き・得意な場合はなおさら、初めからBCを受けたほうがいいでしょう。時間がもったいないです。また、どちらも公式が多いので、自分で公式リストを作り、新しい公式が登場するたびに書き加えていくと勉強や宿題がはかどります。試験は選択形式と筆記形式で、どちらのパートもグラフ用電卓の使用が許可されています。使い方をマスターしておきましょう。AB、BCともに必要な公式を覚え、練習問題を解いて対策すれば苦戦しないレベルです。対策本は使いませんでした。公式のリストと過去問が一番の対策法だと思います。

AP Biology (スコア:5)

進化論、細胞、遺伝などについて幅広く学びます。

試験問題は選択形式と筆記形式に分かれています。筆記問題では文章だけでなく図を求められる場合もあるのが特徴的です。私が受けた試験では細胞分裂の工程を図を書いて説明する問題が出ました。また、全体的に、「××年にイエローストーンの狼の群れに起こったこの現象は何という生物学的プロセスの一例か」といった初めて見る実例を交えた応用問題が多いため、概念を言葉で覚えるだけでなく、しっかり理解しておくことが重要です。

勉強不足だったこともあり、試験の難易度は高めに感じました。対策本は使わず授業中にとったノートや過去問で勉強しました。

AP Physics C: Mechanics (スコア:5)とAP Physics C: Electricity and Magnetism (スコア:5)

物理(Physics C)はMechanics (力学)とElectricity and Magnetism (電気・磁気)に分かれており、どちらかの試験だけを受けることもできます。また、Physics 1と2に必要な数学レベルがAlgebra (代数)であるのに対し、Physics Cには微積が必要なのでCalculus終了後、あるいはCalculusと同時に受けることを強く推奨します。

基本的な微積の公式に加えてかなりの量の物理の公式を使うのでCalculus同様、自作公式リストを作るのがおすすめです。

内容は全APの中でも屈指の難易度と言わる科目で、物理や数学嫌いの人は途中で心が折れてしまうかもしれませんが、物理がキーとなる学科(工学系)に進む場合は非常にためになります。試験は選択肢形式パートと筆記パートに分かれておりどちらも難易度が高いです。ただし合格のボーダーは低く、目安としては約4割正解でスコア3、約5割でスコア4、6割取れれば大抵スコア5が取れます。対策本はPrinceton Reviewの物を使いました。物理の勉強は練習問題を解いて理解力を高めるのが重要だと思うので、この本の大量の練習問題と解説はとてもありがたかったです。

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